監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士
相続が発生すると、遺言書や遺産分割協議に基づいて、亡くなった方(=被相続人)の保有していた財産(=遺産)を分けることになります。
法律上、遺産分割協議そのものに期限はありませんが、相続の手続きの中には期間制限が設けられているものがいくつかあります。
遺産分割や相続の手続きを放置してしまうと、相続関係が複雑になったり、法的効力が失われたり、ペナルティが課されるといったリスクがあるので、【相続手続きの期限】について、本ページでしっかり確認していきましょう。
Contents
相続手続きの期限について
相続の手続には、期限のあるもの・期限のないものがあります。
それぞれ主な手続は、次のとおりです。
| 期限のある手続 |
|
|---|---|
| 期限のない手続 |
|
相続放棄は3ヶ月以内に手続が必要
相続放棄とは、相続人が被相続人の遺産について、資産や負債などの一切の権利・義務を放棄することです。
相続放棄するためには、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月の熟慮期間内に家庭裁判所で手続きを行う必要があります。
- なにもしなかったり、手続きが遅れたりした場合は?
3ヶ月が過ぎてしまうと、“単純承認”したものとして、基本的に相続放棄は認められなくなります。
ただし、熟慮期間後に多額の負債が判明したなどの事情がある場合は、例外的に相続放棄が認められることもあるので、弁護士に相談してみましょう。 - 熟慮期間は延長できる?
相続放棄するにあたっては、「遺言書の有無の確認」や「相続人・相続財産の調査と確定」を行う必要があります。
3ヶ月の熟慮期間を超過するおそれがある場合は、家庭裁判所に熟慮期間の延長を申し出ましょう。
準確定申告は4ヶ月以内
準確定申告とは、相続人が被相続人の代わりに行う確定申告のことです。
被相続人に申告が必要な所得があった場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、相続人全員で準確定申告の手続を行う必要があります。
◆どんなときに準確定申告が必要?
準確定申告が必要になるのは、被相続人に次のような所得がある場合です。
- 2000万円以上の給与所得がある場合
- 公的年金などによる収入が400万円以上ある場合
- 事業所得・不動産所得がある場合
- 2ヶ所以上の企業から給与を受けていた場合
- 給与や退職金以外で20万円以上の収入がある場合 など
◆申告の期限を過ぎてしまった場合は?
準確定申告の期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などのペナルティが課されるおそれがあります。
被相続人が1月1日から3月15日までの間に亡くなった場合は、亡くなった年の前年分の準確定申告もあわせて必要になるため、早めに手続きを行いましょう。
相続税の申告・納税期限は10ヶ月以内
相続税とは、被相続人の遺産を受け継いだ相続人に課される税金のことです。
相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に、相続税の申告から納税までを行う必要があります。
◆相続税申告・納税の期限を過ぎてしまった場合は?
相続税の申告・納税の期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などのペナルティが課されるおそれがあります。
したがって、遺産分割が完了していない場合は、法定相続分で申告・納税したうえで、実際の相続税が確定した後に更正や修正の申告を行いましょう。
◆相続税額を軽減する特例・控除とは?
相続税には、条件に応じて相続税額を減額する特例・控除というしくみがあります。
主な特例・控除は次のとおりですが、遺産分割が完了していない場合や期限が過ぎた場合には適用が認められなくなるので注意しましょう。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減
- 未成年者、障害者の税額控除
- 相次相続控除
- 贈与税額控除 など
不動産の遺産相続登記の期限
相続登記とは、不動産の名義を相続人に変更する手続きのことです。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続人が土地や建物などの不動産の所有権取得を知った日、あるいは遺産分割が成立した日から3年以内※1に行わなければなりません。
※1…令和6年4月1日より前に相続が発生していた場合も相続登記の義務が適用されますが、施行日から3年間は、義務を履行するための猶予期間が設けられています。
【相続税の申告と同時に手続きすることがおすすめです】
相続登記と相続税の申告では、遺言書または遺産分割協議書の写しや、被相続人の戸籍謄本など、必要書類が重複しているものが多いので、同時に手続きを行うことがおすすめです。
◆相続登記の期限を過ぎてしまった場合は?
正当な理由なく、期限内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
期限内に遺産分割が完了しない場合は、“相続人申告登記”という簡易な手続きを行うことで、義務を果たすこともできます。
遺留分侵害額請求の期限は1年以内
遺留分侵害額請求とは、遺言や贈与によって相続人の遺留分(最低限保障された遺産の取得分)を侵害された場合に、侵害額に相当する金銭の支払いを請求することです。
遺留分侵害額請求できる権利は、2つの時効により消滅してしまうので、注意が必要です。
【遺留分侵害額請求の2つの時効期限】
遺留分侵害額請求できる権利は、相続開始および遺留分の侵害の事実を知った時から1年、または相続開始から10年を経過すると消滅してしまいます。
遺留分を侵害されている可能性がある場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
生命保険金は3年以内に請求
生命保険金は、遺産分割の対象にならないことが多いですが、請求できる期限が定められているので注意しましょう。生命保険金の場合、支払事由、つまり被相続人が亡くなった日から3年が請求時効です。
◆生命保険金を請求できる期限を過ぎてしまった場合は?
生命保険金は、3年の期限を過ぎてしまうと時効により請求権が消滅してしまいます。
もっとも、期限が過ぎていても支払いに応じてくれる場合もあるので、諦める前に、まずは保険会社に確認してみることをおすすめします。
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遺産分割協議は10年経過していても行うことができる
遺産分割協議とは、被相続人の遺産を、誰が、どのように相続するのかを法定相続人全員で取り決める話し合いのことです。
遺産分割協議に期間制限はないので、被相続人が亡くなって10年が経過していても行うことは可能ですが、放置するのは危険です。
◆なぜ遺産分割協議を放置すると危険?
遺産分割協議そのものに期限はないからと放置していると、相続が複雑化したり、特別受益や寄与分の請求ができなくなったり、相続税の特例・控除が適用されないなど、さまざまな手続きに支障をきたすおそれもあるので、早めに行うことをおすすめします。
遺産分割のやり直し期限
遺産分割協議は、当事者全員の合意があればやり直すことが可能で、この場合の期間制限はありません。
もっとも、錯誤や強迫などにより遺産分割協議の取消を求める場合は5年の消滅時効という制限があります。
ほかにも、第三者に遺産を譲渡している場合は取り戻すことが難しい点や、遺産分割をやり直すことで余分な税金がかかる点などに注意しなければなりません。
遺産分割のやり直しについては、以下ページもご参照ください。
遺産分割のやり直しについて詳しく見る遺産分割の期限について詳しくは弁護士にご相談ください
遺産分割に関連する相続の手続きには、期間制限のあるものが多くあります。
これらの手続きは、単独で行えるものもあれば、相続人全員で行う必要があるものもあって、期限に間に合わなくなるケースも少なくありません。
また、相続は人生で何度も経験するものではないので、うっかり期限を忘れたり、そもそも期限があることを知らなかったりする場合もあると思います。
手続きの期限が過ぎてしまって、思うように相続ができなかったり、ペナルティが課されたりすることのないよう、遺産分割や相続で不安や疑問がある場合は、ぜひお早めに弁護士法人ALGまでご相談ください。

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保有資格弁護士(札幌弁護士会所属・登録番号:64785)
