監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士
交通事故に遭ったあと、首に痛みを感じる方も多いでしょう。
この痛みが将来的にも残る場合、「後遺障害」と認定され、慰謝料などを受け取れる可能性があります。
ただし、後遺障害は簡単に認められるものではないため、必要な手続をしっかり行えるかがポイントとなります。
本記事では、事故後に首の痛みを感じた場合の対応について、詳しく解説していきます。
首の痛みに悩まれている方は、ぜひご覧ください。
Contents
首が痛いだけでは後遺障害とは認められない
ただ首の痛みを訴えても、後遺障害とは認められません。
後遺障害と認められるには、首の痛みなどの後遺症が存在し、それが事故によるものであること、将来的にも回復が難しいことを医学的に証明できることが必要です。
これらが証明できれば、後遺障害等級第14級又は第12級が認定され、後遺障害慰謝料を受け取れる可能性があります。
後遺障害と認められるには検査が必要
首の痛みを医学的に証明するためには、さまざまな検査を受ける必要があります。
まず、レントゲンやCT検査、MRIなどの画像検査によって、神経に明らかな異常がないか確認します。
また、患者の頭を後ろに倒し、痛みやしびれの有無を調べる「ジャクソンテスト」や「スパーリングテスト」といった神経学的検査も行うのが一般的です。
首の痛みの原因と関係のある傷病
交通事故後の首の痛みは、「むちうち」や「脳脊髄液減少症」が原因で起こりやすいといわれています。
いずれも交通事故で発症しやすい傷病なので、どんな怪我なのか把握しておきましょう。
むちうち
むちうちとは、事故の衝撃で首が鞭のようにしなり、神経や筋肉を損傷する怪我のことです。正式には「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」などと診断され、交通事故では最も多い怪我といわれています。
主な症状は、首の痛みや手のしびれ、頭痛、めまい、吐き気、倦怠感などです。
また、事故から数時間~1日経ってから症状が現れることもあります。
むちうちは負傷後2~3ヶ月で改善するのが一般的ですが、長年又は将来にわたって痛みがとれないケースもみられます。
脳脊髄液減少症
脳脊髄液減少症とは、事故などの衝撃で脳や脊髄を覆っている膜が破れ、中の「髄液」が外側に漏れ出てしまう傷病です。
これによって膜の内側の圧力が下がり、さまざまな不調をもたらします。
首の痛み以外にも、起立時の頭痛、めまい、耳鳴り、聴力や視力の低下といった症状がみられます。事故から数日~数週間経ってから発症するケースが多いため、見逃さないよう注意が必要です。
また、症状は人によってさまざまなので、上記の症状以外にも不調がみられたら早めに受診することをおすすめします。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故後に首が痛い(首の痛みが続く)時にやるべきこと
事故後に首の痛みを感じる場合、早めに整形外科を受診しましょう。
放置すると痛みが悪化したり、回復が遅れたりする可能性があるためです。
治療も医師の指示に従うのが基本です。
病院では、まず、痛みを和らげる治療を行うのが一般的です。
ある程度痛みが引いたら、温熱療法や電気療法などの「物理療法」によって筋肉の緊張をほぐしたり、ストレッチやマッサージなどの「運動療法」で筋肉を鍛えたりするリハビリが行われることが多いです。
首が痛い場合にやってはいけないこと
むちうちでは、首はなるべく動かさず安静にしておくのが重要だと言われています。
ついポキッと音を鳴らしたくなりますが、余計な負担がかかり症状が悪化するおそれがあるため、控えましょう。
また、自己判断で強くマッサージすることも避けましょう。刺激を与えると、炎症や筋肉の損傷を悪化させる可能性があるためです。
マッサージのやり方は医師に相談しながら行いましょう。
首の痛みと交通事故の因果関係が認められた裁判例
【東京地方裁判所 平成11年8月30日判決】
原付バイクで走行中のXが、車線変更してきた別の車両を避けるためにハンドルを左にきったところ、停車中の自動車に衝突したという事故です。
Xはこの事故で、頚椎捻挫や変形性頚椎症などを負い、36日間の入院と約3年半の通院を余儀なくされました。
残った頚部の痛みや左上肢のしびれについて、自賠責保険は後遺障害等級非該当と判断しましたが、裁判所は以下の点を考慮し、後遺障害等級14級10号に該当すると判断しています。
- 事故態様が軽微とはいえない
- 事故直後から症状の内容が一貫している
- 医師が頚椎の変形を認め、それによって症状が長引いていると判断している
- 神経学的検査が陽性である
交通事故後の首の痛みにお困りなら弁護士にご相談ください
交通事故による首の痛みは、適切な治療を行わないと症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。
また、後遺障害等級を申請する際も、必要な検査を漏れなく行い、有効な書類を作成するなど煩雑な手続が多いです。
弁護士であれば、保険会社とのやり取りや後遺障害等級の申請手続を被害者の方に代わって対応することができます。また、適切な通院方法についてアドバイスできるので、安心して治療を続けることができるでしょう。
弁護士法人ALGは、交通事故事案の経験が豊富な弁護士を多く抱えています。
ひとりひとりの状況に合わせ、最後までしっかり対応させていただきます。
交通事故に遭われて困っている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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保有資格弁護士(札幌弁護士会所属・登録番号:64785)
