
監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士
夫婦の間に未成年の子供がいる場合、離婚後、あるいは別居中、子供は父母どちらか一方と暮らすことが一般的です。両親の離婚や別居に、不安を抱える子供は少なくありません。不安を払拭するためには、子供が両親の愛情を実感できることが大切です。
その方法のひとつが、面会交流です。子供が面会交流を心から楽しめるようにするためには、父母の協力が必要不可欠です。大人が思っている以上に、子供は親の表情や気持ちに敏感です。夫婦間にはさまざまな事情があるかと思いますが、どのような面会交流が子供の幸せにつながるのかを、これから紹介する内容をもとに、一緒に考えてみましょう。
Contents
面会交流とは
面会交流とは、両親の離婚や別居によって、子供が、離れて暮らす親と、定期的に会って遊んだり、電話や手紙などで継続的に交流することをいいます。子供の面会交流は、民法で認められた、子供の権利でもあります。
子供が心身ともに、健やかに育っていく過程には、両親の愛情が必要不可欠です。子供に危険が及ぶような特別な事情がない限り、子供の幸せ(福祉・利益)を最優先に、面会交流が行われます。
面会交流ができるのは何歳まで?
面会交流は、子供が成人(18歳)するまで続けられるのが一般的です。成人後、子供の意思で交流を続けることも可能です。ただし、子供が成長するにつれて、自分の意思で物事の判断ができるようになるため、面会交流を行うかどうかは子供の意思が尊重されます。
別居中でも面会交流はできるのか
面会交流は、子供が離れて暮らす親と交流することなので、離婚の成否は問いません。そのため、離婚調停中に別居している場合でも、面会交流は認められます。子供と離れて暮らす親は、離婚調停が長引くと、子供になかなか会えなくなります。
子供と一緒に暮らす親の許可なく、子供と会うことは争いが生じるおそれがあるためです。そのため、子供と離れて暮らす親が離婚前の面会交流を求めて、面会交流調停を申し立てて、面会交流の取り決めを行うケースもあります。離婚前であっても、面会交流は、子供の幸せ(利益・福祉)が優先される点は変わりません。
面会交流について決めるべきルールとは
子供が安心して面会交流できるように、いくつか取り決めておくべきことがあります。子供の意向を尊重することも大切ですが、子供の心身に負担がかからないように、子供の年齢や健康状態、生活状況を十分配慮し、無理のない範囲で決めましょう。
面会頻度
標準的な面会頻度は、月に1回程度です。近くに住んでいて、子供と離れて暮らす親との関係が良好なケースでは、週に1回、逆に遠方に住んでいて、交通費の負担が大きい場合では、数ヶ月に1回とするケースもあります。
できる限り、子供の希望に沿った頻度が望ましいですが、現実的に実現が難しい取り決めは、かえって子供をがっかりさせてしまうこともあるので、履行できる範囲を心がけましょう。
面会時間
1回の面会時間も、取り決めておくと、面会交流の実施がスムーズになります。「1回につき3時間」といったように、長さだけを決めておいて、開始時刻と終了時刻は都度、予定に合わせたり、「昼食を一緒に食べたいから、10時から15時まで」のように、開始時刻と終了時刻を決めるなど、柔軟な取り決めが可能です。
子供の年齢が低い間は短い時間にしておいて、年齢を重ねるにつれ、面会時間を長くするなど、子供の年齢や生活状況に応じて変えていくケースもあります。
面会場所
面会場所は、当事者間で事前に決めておくことも、子供と離れて暮らす親や、子供自身に任せることも可能です。子供が幼い間は当事者間で決めて、ある程度子供が成長したら、時間内はどこでも自由とするケースが一般的です。
ゆっくり過ごすのであれば自宅、楽しく遊べる公園や遊園地、ショッピングモール、レストランなど、子供と親が一緒に楽しく過ごせる場所が理想的です。
当日の待ち合わせ方法
面会交流の待ち合わせ方法についても、問題とならないように決めておくとよいでしょう。子供が幼い間は、父母のどちらが送迎するのか、また送迎場所や時間を決めておきましょう。子供が成長すれば、離れて暮らす親と子供自身が、直接待ち合わせすることも可能です。
待ち合わせ方法のほかに、面会場所が遠方の場合の交通費など、費用の負担をどうするのかも、あらかじめ取り決めておくことをおすすめします。
連絡方法
基本的に、面会交流についての連絡のやり取りは、父母間で行うことになります。電話番号やメールアドレスなど、複数の連絡先を交換しておきましょう。細かく取り決めたから連絡を取る必要はないと思っていても、突然体調を崩すなど、突発的な連絡が必要になることが予想されます。
子供のために、協力できる体制が理想です。もっとも、配偶者からのDVやモラハラといった、なんらかの事情で、直接連絡することが困難な場合は、弁護士や、支援団体など第三者機関に依頼することも可能です。
学校行事への参加
入学式や卒業式、運動会、発表会、授業参観など、子供の学校行事の参加についても、子供の意向を確認したうえで、事前に詳細なルールを取り決めておきましょう。行事には、参加できる人数に制限が設けられていることもあります。突然参加して困らせるような事態は避けましょう。学校行事に限らず、習い事の発表会についても同様です。
プレゼントやお小遣い
久しぶりに会える我が子に、なにかしてあげたいという親心もわかります。ですが、過剰なプレゼントやお小遣いは、かえって子供に悪影響を与える可能性があります。
また、子供の教育方針にもかかわることなので、「プレゼントは、誕生日やクリスマス、入学・卒業のお祝いなど節目の時期に、いくらまで」、「お小遣いは、月いくらまで」といったように、事前に頻度や金額などのルールを取り決めておきましょう。
対面以外の交流方法
面会交流は、電話やメール、SNSのメッセージ、手紙といった間接的な方法で、意思疎通を図ることも可能です(間接交流)。物理的な距離などの事情で直接会うことがむずかしい場合に有効な手段です。
また、はじめは動画や写真などで間接的に交流をはかり、慣れた頃に対面をする、といったように、対面とうまく組み合わせることも有効的です。頻度が多すぎても、少なすぎても、子供の心情に影響を与える可能性があるため、考慮したうえで、方法や頻度を取り決めておきましょう。
宿泊について
宿泊や旅行についても、可能かどうか、日程や宿泊場所などの調整方法を、事前に決めておきましょう。予定にない、突然の宿泊は、子供を待っている親(一緒に暮らしている親)だけでなく、子供自身をも不安にさせかねません。
子供の予定にも影響を及ぼす可能性もあります。「夏休みや冬休みなどの長期休暇は宿泊を認める」、「年1回の旅行を認める」といったように、あらかじめルールを取り決めておく必要があります。
祖父母の面会交流
面会交流は、親子間に認められた権利です。そのため、残念ながら、祖父母に面会交流権はありません。とはいえ、親同士の間で合意できている場合には、祖父母が子供に会うことに問題はありません。
子供が望むのであれば、祖父母との交流を積極的に検討してみてもよいでしょう。祖父母との面会交流を認める際は、後のトラブルを避けるためにも、具体的な方法(場所や日時など)を決めておきましょう。
面会交流を決める際の流れ
面会交流を認めるかどうか、面会交流のルールについては、以下の流れで取り決めがなされるのが一般的です。
①父母による話し合い(協議)
⇩ ※話し合いがまとまらない場合
②面会交流調停
⇩ ※調停が不成立の場合
③審判
父母の話し合いや、調停・審判によって面会交流の取り決めがなされると、ルールに従って面会交流が実施されます。父母だけで面会交流の実施が困難な場合は、弁護士や支援団体が間に入って、連絡や、面会交流に付き添うといったことも可能です。
まずは夫婦間での話し合い(協議)
まずは父母で、面会交流について話し合って決めます。頻度や交流方法のほかに、プレゼントや宿泊の有無など、具体的なルールを取り決めておきます。双方が納得した合意内容は、合意書を作成して、かたちに残しておきましょう。
合意書は、公証人の立ち合いの上で作成する「公正証書」として作成しておくと、後のトラブルを防ぐことに繋がる可能性があります。
話し合いで決まらない場合は面会交流調停へ
父母間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に面会交流を求める、面会交流調停を申し立てます。調停委員会が父母の間に入って、助言したりして、取り決めに向けての話し合いをします。
調停が成立すると、取り決めた内容をもとに調停調書が作成されます。もしも調停不成立となった場合は、裁判所の判断で自動的に審判へと移行して、子供の利益・福祉のために最適な取り決めがなされます。
取り決めた面会交流が守られなかった場合
調停や審判で取り決めたにもかかわらず、相手が面会交流に応じない場合の対処方法を紹介します。
- 履行勧告
まず、家庭裁判所に履行勧告の申出をして裁判所から相手に、取り決めを守るよう説得・勧告してもらいます
⇩ ※相手が履行勧告に応じない場合 - 間接強制
面会交流の日時、頻度、方法などを具体的に取り決めていると間接強制の方法による強制執行ができる可能性があります一定の期間内に面会交流を実施しない場合、金銭的なペナルティを課すことで相手に心理的圧迫を与え、自発的な面会交流実施を促す手続きです
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取り決めた面会交流を拒否したい場合
子供にとって面会交流は、普段離れて暮らす親の愛情を実感できる、貴重な機会です。親側の事情や、正当な理由なく、取り決めた面会交流を拒否することは、原則できません。
面会交流が拒否できるケースもありますが、一方的に拒否するのは避けた方が良いでしょう。相手に事情をきちんと伝え、話し合ってみましょう。当事者同士での話し合いが難しい場合には、裁判所の手続きをもって、面会交流を制限・拒否することも可能なので、一度弁護士にご相談ください。
《面会交流が拒否できるケース》
- 体調不良や学校行事など、子供の事情
- 相手が子供に暴力を加える危険性が高い
- 相手が子供を連れ去るおそれがある
- 相手が取り決めたルールを守らない
- 面会交流中、子供に不相応な場所へ連れて行ったり、一方の親の悪口を聞かせた
- 子供が面会交流を拒否している※嫌がる理由をよく聞き、面会交流に前向きになれるよう対応が必要です
面会交流と養育費の関係
面会交流が問題となる原因のひとつに、養育費との関係が挙げられます。
たとえば、子供と暮らす側の親が、「養育費はいらないから、面会交流させない」と主張することもあれば、逆に子供と離れて暮らす親が「面会交流させてくれないから、養育費を払わない」と主張するなど、面会交流と養育費を交換条件に用いるケースがあります。
どちらも子供に関する問題であることにかわりありませんが、養育費は、子供が生活する上で必要な費用で、面会交流の対価ではありません。養育費の支払いは親の義務なので、子供の権利である面会交流とは別問題であることをご理解ください。
再婚した場合の面会交流
父母のどちらか、あるいは両方が再婚した場合でも、子供と親の関係はかわりません。再婚を理由に、相手に会わせたくないと拒否したり、再婚相手が拒否するケースもありますが、子供と離れて暮らす親と、子供自身が望む限りは、面会交流を続ける必要があります。
とはいえ、親の再婚相手と子供が養子縁組をした場合には、子供が新しい環境に慣れることも大切です。父母間で話し合い、慎重な判断が求められます。また、面会交流に再婚相手を伴うケースでは、子供の心に負担がかかるおそれがあります。子供の意思を尊重することを、忘れないようにしましょう。
面会交流で不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう
子供は、離れて暮らす親に対して「もう自分を好きじゃない」、「自分のことはどうでもいいんだ」と、思い込んでしまうこともあります。面会交流は、そんな子供にとって、離れて暮らす親が自分に関心を持ち、愛情を注いでくれていると実感できる、大きな支えとなります。
子供が望む面会交流を実現するために、父母の協力が必要不可欠といっても、さまざまなご事情で困難な場合もあると思います。面会交流の取り決めに不安がある、大切な子供のためでも相手と連絡を取ることは苦痛など、面会交流についてお困りのことは、一度弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(札幌弁護士会所属・登録番号:64785)