監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士
夫婦間で離婚について話合いが進まない場合や、離婚条件について折り合いがつかない場合、家庭裁判所の「離婚調停」の手続を利用することで解決できる場合があります。
しかし、多くの方は初めて利用する調停手続に不安を抱かれるでしょう。
調停は、調停委員と当事者が交互に自分の意見を主張したり、調停委員からの質問に答えたりして進められます。では、調停委員からはどのようなことを聞かれるのでしょうか。
この記事では、離婚調停の際に調停委員から聞かれることや、落ち着いて答えるための事前準備などを解説していきます。ぜひご参考ください。
Contents
申立人が離婚調停で聞かれること
申立人が離婚調停で聞かれることは、主に以下の7つです。
- ①結婚した経緯
- ②離婚を決意した理由
- ③現在の夫婦関係の状況について
- ④子供に関すること
- ⑤夫婦関係が修復できる可能性について
- ⑥離婚条件について
- ⑦離婚後の生活について
では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
結婚した経緯
なぜ離婚調停を申し立てることになったのかを把握するために、「結婚した経緯」はよく聞かれる質問です。
あくまでも「離婚を考えるに至った経緯」を知ることが目的であり、思い出話や苦労話を細かく説明する必要はありません。
「どこでどのように出会い、結婚した」という一連の流れをざっくり説明する程度で良いでしょう。
離婚を決意した理由
離婚を決意した理由は、特に調停委員が聞きたいことです。
離婚したいと思ったきっかけを明確に説明するようにしましょう。
離婚を決意した理由と同じタイミングで、「離婚について相手と話し合ったか」「話し合った場合はどのような内容なのか」といったこともよく聞かれます。
この質問は、調停を今後どのように進め、解決に向けていくかを調停委員が判断するために大切な質問です。
感情的にならず、冷静に、要点を押さえて質問に答えるように心がけましょう。
現在の夫婦関係の状況について
現在の夫婦関係の状況については、大きく分けて「生活面」と「経済面」の状況について聞かれるでしょう。
- 生活面
- 現在一緒に暮らしているのか、別居しているのか
- 別居している場合は別居期間がどのくらいか など
- 経済面
- 生活費はどのようにやりくりしているのか
- 別居の場合婚姻費用は支払われているか など
このとき、嘘をつかないように注意してください。
プライベートな質問には答えにくいと思われるかもしれませんが、調停委員は数々の夫婦の問題を見てきており、何ら問題はありません。
むしろ、嘘をついてバレてしまうと悪い印象を与えてしまうリスクがあります。
言いたくないことについては、嘘をつくのではなく、言いたくないと伝えた方が印象が良いです。
子供に関すること
夫婦の間に未成年の子供がいる場合は、子供に関することも聞かれるでしょう。
具体的には、離婚後の「親権」、「養育費」、「親子交流(面会交流)」についてどのように考えているかを聞かれることになります。
養育費や親子交流(面会交流)は離婚後でも取り決めができますが、親権の問題は父母のどちらが親権者になるかを定めるか、親権者をいずれに決めるかについての手続きが裁判所に係属していないと、離婚を成立させることはできません。
子供の親権を父母双方が望んでいる場合、親権争いになることも考えられます。
しかし、調停委員は子供の福祉を優先的に考え、父母のどちらが親権者として適任かを判断しますので、子供の気持ちについても正直に話しましょう。
夫婦関係が修復できる可能性について
調停委員から夫婦関係が修復できる可能性について聞かれることもあります。
「離婚調停を申し立てたのになぜそんなことを聞くのか」と思われる方もいるかもしれません。しかし、離婚調停の正式名称は「夫婦関係調整調停」といい、必ずしも離婚すること、させることが目的ではありません。
当事者双方の主張を聞くことで、夫婦関係が修復・維持できるのであれば和解を目指すように調停の方向を変更することもあります。
そのため、相手との修復は困難であり離婚を望んでいる場合は、その旨をはっきりと伝える必要があります。
曖昧な返答や修復の可能性がある発言は控え、「今まで修復しようと努めたけれど、改善することはなかった」「離婚したい」と伝えましょう。
離婚条件について(養育費、財産分与、慰謝料)
離婚を成立させるためには、離婚条件についても話し合わなければなりません。
特にお金に関する条件は揉めやすいため、希望する条件について調停委員から質問されるでしょう。
具体的には特に揉めやすい、「養育費」「財産分与」「慰謝料」について、これらの請求を考えている場合はその金額、もしくは、ある程度の方向性を答えられるようにしておきましょう。また、希望する金額については証拠を揃えたうえで、主張することが大切です。
以下、それぞれ必要なものを確認しておきましょう。
- 養育費
養育費は夫婦の収入で決まることが多いため、源泉徴収票、確定申告書、給与明細などの収入がわかる資料が必要です。さらに、相場以上の養育費を求めるのであれば、教育費や医療費を示す資料を準備しましょう。 - 財産分与
預貯金や不動産、株式、債券、保険、自動車など夫婦の共有財産を明確にしておきましょう。相手が財産を開示しない場合は裁判所を通じて情報を照会する「調査嘱託」等の手続の利用を検討します。 - 慰謝料
慰謝料は離婚の事実だけでは請求できません。相手の不法行為により「精神的苦痛を受けた」場合に請求できるため、その根拠や証拠を揃えておきましょう。
離婚後の生活について
離婚後の生活について具体的・計画的に想定しているかという点について聞かれることもあります。
例えば、以下のように聞かれるでしょう。
- 離婚後の住まいは決まっているか
- 定職に就いているか・就く予定はあるか
- 子供の環境の変化に対するケアはできる状態か
子供がいる場合には、離婚後の子供の生活について検討していることを示した方が良いといえます。
子供がいない場合であっても、離婚後にどのように生活するかの見込みが立っていない場合には、離婚の意欲が低いとの印象を与えてしまうおそれがあります。
そのため、離婚後の生活についてしっかりと具体的な計画をしていることを主張し、離婚に対して本気であることを調停委員に伝えましょう。
相手方が聞かれること
離婚調停は、離婚がゴールではなく夫婦関係の調整をする場となりますので、相手方にも「離婚をする意思があるのか」ということを聞くことになります。
これに対し、相手方が「離婚する意思はない、円満を望む」と答えた場合には、その理由や、夫婦関係を再構築するためにはどのように進めていくかを聞かれるでしょう。
また、相手方が「離婚する意思がある」と答えた場合には、離婚の条件について話合いがされることになります。
1回あたりの所要時間の目安と調停の流れ
1回あたりの調停でかかる時間はトータルで2時間程度となります。
調停の流れを見ていきましょう。
- ①開始前に待合室で待機
呼出状に記載された指定の待合室で待機します。このとき、相手方とは別々の待合室が用意されるなど、顔を合わせないよう配慮されています。しかし、裁判所の構造によっては廊下やお手洗い等で偶然遭遇してしまうおそれもあるため、注意が必要です。 - ②調停室に移動し、調停委員と話合い
申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員と話合いを行います。一方が調停室で話合いをしている間、他方は待合室で待機することになります。1回30分で交代し、申立人・相手方が2回ずつ話して合計2時間程度というのが基本パターンとなります。 - ③次回の調停期日の決定
予定された時間になった場合や、話合いを進められない場合であればその日の調停を終えて、続きは次回期日に話し合うことになります。
離婚調停で落ち着いて答えるための事前準備
余裕をもって到着できるよう、裁判所へのアクセスを確認
裁判所の内部の地図は、一般に広く公開されていないことも多いです。調停に落ち着いた状態で臨むためにも、裁判所には余裕をもって到着するようにしましょう。
事前に裁判所までのルートや所要時間、車で行くのであれば駐車場が近くにあるのかなど確認しておくようにしましょう。
特に北海道においては、冬期の積雪や吹雪による大規模な交通障害(JRの運休や高速道路の通行止めなど)が発生する可能性があります。
遠方から札幌等の家庭裁判所へ向かう場合は、天候による遅延リスクも考慮し、より余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。
聞かれる内容を予想し、話す内容をまとめる
初回の調停期日では、特に調停委員からの質問にしっかりと答えることが大切です。
自分の思いをまとめられない状態で、調停に一人で臨むことは、お勧めできません。
ぶっつけ本番で臨むよりも、聞かれる内容や答える内容をある程度想定して事前に準備しておくようにしましょう。
弁護士が共に出席する場合には、事前に弁護士にこれまでの事情を話しておくと、当日に的確なサポートを受けやすいです。
相手の出方を予想し、対処法を考えておく
調停では、相手方も同じように調停委員から質問されることになります。
そのため、相手方がどのような主張をするか、どのような条件を出してくるかをある程度予想しておき、反論するのか、妥協案を提示するのかといった対処法を考えておくことが大切です。
調停はお互いの主張をぶつける場でもありますが、争うことが目的ではありません。
あくまでも話合いで問題の解決を図る場です。
相手の出方について対処法を考えてシミュレーションしておくことは、調停を早期に成立させるために効果的といえるでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
調停委員からの質問に答える際の注意点
離婚調停は、調停委員が申立人と相手方を仲介するため、調停委員に悪い印象を与えてしまうと不利な結果になるおそれもあります。
そのため、以下では調停委員からの質問に答える際の注意点について解説していきます。
落ち着いて端的に話しましょう
相手方からの主張を聞くと、つい感情的になったり、相手方への不満を爆発させたりしてしまうこともあるかと思います。
しかし、感情的になることは調停委員から悪い印象を持たれてしまうおそれもありますので、落ち着いて端的に話し合うようにしましょう。
調停委員との価値観の違いに注意
調停委員も人ですから、しっかりと話を聞いてくれる方もいれば、高圧的な方もいるでしょう。そもそも、調停委員は当事者間を仲介する立場にあるため、申立人にすべて味方してくれるわけではありませんし、価値観が違うのは当然です。
そのため、自分の意見を受け入れてくれないことに怒りを露わにするのではなく、調停委員に理解してもらえるよう主張の仕方を工夫しましょう。
嘘はつかず誠実に答える
調停委員は立場上、答えにくいような質問をしてくることもあります。
自分に不利な質問だと思っても、嘘はつかず誠実に答えるようにしましょう。
もし、あとから嘘が発覚してしまえば、調停委員の印象が悪くなるだけでなく、今までの事実も疑われてしまいます。
聞かれてないことを自ら話さない
調停委員から聞かれていないことはできる限り話さないようにしましょう。
話過ぎることでご自身にとって不利な発言をしてしまう可能性もあります。また、要点を得なかったり、必要のない主張をすることは、調停委員に悪い印象を与えかねません。
長文の陳述書は書かない
陳述書は提出必須のものではありませんが、申立書や回答書の補足として提出しておくと有効な場合もあります。
ただし、その際は端的に分かりやすくすることが大切です。あまりに長い陳述書は、読む側に伝わりにくく混乱させてしまいます。
また、陳述書は相手方にも公開されますので、相手方を攻撃するような内容であれば調停の成立が難しくなり、離婚まで長引いてしまうおそれもあります。
優先順位の低い離婚条件にこだわり過ぎない
離婚調停はあくまでも夫婦関係を調整する話合いですので、多くの離婚条件にこだわりすぎると話合いが長期化するだけでなく解決から遠ざかってしまう可能性もあります。
まずは、絶対に譲れない点と歩み寄れる点を明確にしておき、全体的な解決を目指しましょう。
調停で話し合ったことはメモしておく
離婚調停は1回で成立することは稀であり、2回以降も続く場合が多いです。
その際、次回の調停期日までに用意しなければならない反論や証拠を調停委員から伝えられることもあるので、離婚調停で話し合ったことをメモし、2回目以降に備えるようにしましょう。
離婚調停2回目以降に聞かれること
1回目の離婚調停で決着がつかない場合には、次回の調停期日が設定されます。
その際、調停委員から次回の調停期日までに検討してほしい事項を依頼されることもありますので、しっかりと検討し、2回目の調停期日で充実した話合いができるようにしましょう。
離婚調停のお悩みは弁護士にご相談ください
離婚調停を申し立てようと思っても、調停の手続を利用したことがない方が多く、手続や事前準備などについて大きな不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
離婚調停をお考えの方は、私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
私たちは離婚問題に詳しい弁護士が在籍しており、離婚調停の経験も豊富です。
弁護士であれば、質問される内容や回答のアドバイスだけでなく、調停に同席し弁護士が代理人として効果的に主張することが可能です。
遠方にお住まいで裁判所へのアクセスに不安がある場合でも、事案によってはウェブ会議システム等を利用した調停手続が可能なケースもあります。
移動の負担が懸念される方も、まずは一度ご相談ください。
弁護士が調停に同席することで、大きな安心感につながるでしょう。
離婚調停について少しでもお悩みであれば、私たちに一度お話をお聞かせください。

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保有資格弁護士(札幌弁護士会所属・登録番号:64785)
