労務

【2022年10月1日&2024年10月1日施行】社会保険適用拡大による企業への影響と実務対応

札幌法律事務所 所長 弁護士 川上 満里奈

監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士

2022年10月1日、及び2024年10月1日に施行された社会保険適用拡大の対応はお済みでしょうか?年金法の改正によって、今までは社会保険の対象外であったパートやアルバイト従業員が社会保険の対象者となった可能性があります。

改正後の法令に会社が対応できているかどうかを確認しておきましょう。本稿では、社会保険の適用拡大についての概要や、会社が行うべき実務対応等について解説していきます。

2022年10月より社会保険の適用範囲が拡大

正社員以外の短時間で働く従業員への社会保険適用は2016年から始まりました。一定数以上の従業員規模の会社に勤務し、就労時間や給与等の要件を満たした従業員が新たに社会保険の対象者となります。会社の規模を段階的に緩和することで、ある程度小規模の企業に勤める短時間の従業員も社会保険に加入することになります。では、具体的な要件について確認していきましょう。

適用拡大の対象となる企業

2022年10月から、従業員数101人以上の会社まで適用が拡大しました。その後、2024年10月には従業員数51人以上の会社も適用拡大の対象となったことから、社会保険の適用拡大は小規模の会社にも身近な課題となっています。

従業員数のカウント方法

従業員数のカウント方法は、厚生年金保険が適用されている従業員数です。具体的に、「フルタイムの従業員数」と「週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数」を合計した総数です。適用拡大により新たに社会保険に加入するような、フルタイムの3/4未満のみ働く従業員は含めません。

新たに社会保険の適用対象となる労働者

従業員数による規模要件を満たした会社で働く短時間従業員すべてが社会保険の新たな対象者となるわけではありません。以下の要件をすべて満たした従業員だけが対象となります。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 基本給及び諸手当による賃金が月額8.8万円以上
  • 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

臨時の残業時間や残業代、賞与等は上記の要件には含めないため、臨時的な扱いを除外した上で要件を満たすのか確認しましょう。

社会保険の適用拡大で想定される企業への影響とは?

社会保険の適用拡大は会社にどのような影響を及ぼすでしょうか。対象となる従業員への制度説明や加入手続きなどの社内対応はもちろんですが、どの会社にも発生すると考えられる大きな影響は以下の通りです。

  • 社会保険料の負担増加
  • 雇用への影響

それぞれについて解説していきます。

社会保険料の負担増加

社会保険料の負担は労使折半となっています。そのため、社会保険に加入する従業員が増えれば会社が負担する社会保険料も大きくなります。

増加する社会保険料については、概算を算出できるシミュレーターが厚生労働省の特設サイトに掲載されています。また、社内で使用している給与計算ツールなどによって試算してもよいでしょう。人件費の把握のためにも、加入者が増える前に確認しておくことをおすすめします。

雇用への影響

雇用面ではメリット・デメリットが考えられます。メリットとしては、社会保険の加入に魅力を感じる人材を確保できるといった点や、社会保険の年収の壁を意識してシフトを減らしていた人材が就労時間を増やす可能性があるという点でしょう。

それに対して、社会保険加入を望んでいない従業員は、シフトを減らすことを希望するおそれがあります。シフトを減らす希望者が多ければ、人手が足らなくなる可能性もあり得るでしょう。対象者へ社会保険加入のメリットを十分に説明し、人材の定着を促すことが大切です。しっかりと説明するには事前準備が大切ですので、資料等を用意しておきましょう。

社会保険の加入義務に違反した場合の罰則

社会保険の加入義務は法律に定められています。そのため、加入対象であるにもかかわらず、未加入としている場合には、会社に罰則が適用されることになります。

社会保険の未加入は健康保険法第208条に基づき、6ヶ月以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金となるおそれがあります。また、未加入期間については過去2年に遡って保険料を徴求される可能性もあります。

未加入の人数や期間によっては、会社の財政を圧迫するほどの総額になるかもしれません。対応に不安があれば専門家へアドバイスを受けるなどしましょう。

社会保険適用拡大への実務対応でお困りなら、労務問題に強い弁護士にご相談下さい。

社会保険の適用拡大について判断する際は、会社の規模要件だけでなく、従業員それぞれが就労時間等の要件を満たすのかも確認しなければなりません。しかし、取得要件の判断は当初の雇用契約の確認だけでは不十分です。契約上は週20時間未満であっても、実態は20時間を上回っているケースなどは大いにあり得るでしょう。制度を正しく理解しなければ、対象者の選定を誤ってしまうなど、トラブルになる可能性もあります。社会保険適用拡大の実務について、不明点等あれば労務専門の弁護士へご相談下さい。

弁護士法人ALGでは労務問題に強い弁護士が在籍しておりますので、対象者への説明のサポートや要件判定等、幅広くご相談頂けます。少しでも気になる点があれば、まずはお気軽にご相談ください。

札幌法律事務所 所長 弁護士 川上 満里奈
監修:弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長
保有資格弁護士(札幌弁護士会所属・登録番号:64785)
札幌弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません