監修弁護士 川上 満里奈弁護士法人ALG&Associates 札幌法律事務所 所長 弁護士
「無断欠勤」は社会人としてあるまじき行為であり、周囲の社員の負担も増えることから、そのような社員は今すぐクビにしたいというのが会社側の本音でしょう。
しかし、無断欠勤を理由に社員を解雇した事案でも、裁判所に不当解雇と判断されてしまい、会社が敗訴したというケースも少なくありません。
このようなリスクを避けるために、このページでは、無断欠勤が続く社員にとるべき適切な対応方法や、解雇が有効と判断される要件、解雇する場合の注意点などについて、ご紹介していきます。
Contents
無断欠勤が続く社員への対応と流れ
無断欠勤が続く社員への対応とその流れは、以下のとおりです。
- ①本人に連絡をとる
- ②出社命令を出す
- ③指導・処分の検討
- ④退職勧奨を行う
本人に連絡をとる
まず本人に電話やメール、SNSなどで連絡をとり、安否確認を行いましょう。
会社は社員に対し、安全で健康に働けるよう配慮するべき義務を負っています(労契法5条)。
無断欠勤しているにもかかわらず、何の連絡や状況確認もせずに放置して解雇などの重い処分を下した場合、後日トラブルになった際に「会社側が適切な事実確認や配慮を怠った」とみなされ、処分が無効と判断されるリスクが高まります。
無断欠勤の理由には、事故や急病、逮捕などの緊急事態も考えられるため、まずは連絡を取って、欠勤の理由を確認することが必要です。連絡日時と会話の内容は記録して残しておきましょう。
本人と連絡が取れない場合は、家族への連絡や自宅訪問、手紙の送付など引き続き積極的に働きかける必要があります。
出社命令を出す
無断欠勤に正当な理由が認められない場合や、注意指導したにもかかわらず無断欠勤が続く場合は、書面により出社命令を出しましょう。
社員がこの命令を無視して欠勤を続けた場合、単なる無断欠勤に加えて「正当な理由なき業務命令違反」という事実が加わるため、後の懲戒処分や解雇の正当性を裏付ける客観的な根拠となります。
なお、出社命令は文書やメールなど記録に残る形で行うことが必要です。
会社側がしっかりと手続きを取ったことを証拠に残しておくためです。
指導・処分の検討
無断欠勤の原因を調査した上で、適切な指導を行う必要があります。
生活習慣に問題がある場合は、生活スタイルの改善等について指導します。
病気や精神疾患が理由である場合は、産業医等への支援要請や休職を検討し、過重労働やハラスメントが原因である場合は、関係者に意見聴取して問題点を把握し、解決策を講じる必要があります。
指導を行っても状況が改善されない場合は、懲戒処分を検討します。
懲戒処分には、戒告・けん責・出勤停止・減給・降格・懲戒解雇といったものがあります。
ただし、懲戒処分を科すには、以下の要件を満たすことが必要です。
- ①就業規則に懲戒処分の合理的な根拠規定が定められていて、かつその懲戒事由に該当する
無断欠勤が懲戒事由として就業規則に定められていない場合、懲戒処分は認められない可能性が高いです。 - ②処分内容が相当である
処分の相当性は、無断欠勤の態様や動機、業務への影響、社員の反省の態度・情状・処分歴、会社側の原因などを踏まえて判断されます。 - ③手続きが適正である
弁明の機会の付与や懲戒委員会の開催、労働組合や労働者代表との協議など手続的保障をしていたかをもとに判断されます。
退職勧奨を行う
指導や懲戒処分を行っても、状況が改善されない場合は、退職勧奨するというのも一つの選択肢です。
退職勧奨とは、会社が社員に任意で退職するよう求めることをいいます。
退職勧奨による合意退職は、社員の了承を得ている点で争いになりにくいというメリットがあります。
ただし、社員が「何を言われても辞めるつもりはありません」などと退職を明白に断った場合は、これ以上話合いの余地がないため、退職勧奨を中断する必要があります。
退職を嫌がっているにもかかわらず何度もしつこく退職を求めたり、社員を軽蔑するような発言をしたりした場合は、退職勧奨の域を超えて、退職強要として違法となる可能性があります。
退職勧奨はあくまで社員の自由意思による退職を求めるものであることに注意する必要があります。
無断欠勤を繰り返す社員は解雇できるのか?
無断欠勤を繰り返す社員は業務にも支障を与えるため、今すぐ解雇したいと思われるかもしれませんが、直ちに解雇できるわけではありません。
これは、後述する「解雇権濫用法理」が問題となるためです。
「解雇権濫用法理」に関する注意点
解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となる」と定められています(労契法16条)。
これを解雇権濫用法理といいます。
つまり、以下の2つの要件をクリアしないと、社員を解雇することはできません。
- ①客観的に合理的な理由:第三者から見ても、解雇されてもやむを得ない理由がある
- ②社会通念上の相当性:社員の行為や事情、会社側の対応や落ち度などに照らして相当な処分である
無断欠勤した社員の解雇の有効性は、以下の要素をもとに判断されます。
- 無断欠勤の理由や悪質性
- 無断欠勤の回数・期間
- 欠勤が業務に与えた影響
- 会社からの注意指導と改善の見込みの有無
- 類似事案での会社の取扱いなど
正当な理由なく14日以上続いた場合や、会社の指導後も続いた場合、仕事に重大な支障を及ぼした場合等については、解雇が有効となる可能性が高くなります。
普通解雇・懲戒解雇どちらに該当するのか?
解雇には、以下のとおり、普通解雇と懲戒解雇の2種類があります。
- 普通解雇:社員による債務不履行(約束違反)を理由に解雇すること
- 懲戒解雇:重大な企業秩序違反を犯した社員に対し制裁として解雇すること
それぞれ、解雇が有効となる要件などに相違があり、懲戒解雇は普通解雇以上にその有効性が厳格にチェックされるのが特徴です。
いずれの解雇を選ぶかは、就業規則等の規定に応じて、会社ごとに判断します。
ただし、懲戒解雇は社員に科す最も重いペナルティであるため、裁判などの紛争につながる可能性が高いです。穏便に済ませたいならば、懲戒解雇よりは普通解雇の方がベターといえます。
解雇事由として就業規則に定めていない場合
懲戒解雇を行うには、就業規則にあらかじめ懲戒事由と懲戒の手段を定めておくことが必要です(最高裁判所第2小法廷 平成15年10月10日判決参照)。
例えば、「正当な理由なく無断欠勤が14日以上続き、出勤の督促に応じない又は連絡が取れないときは懲戒解雇とする」といった規定を盛り込むことが求められます。
一方、普通解雇については、就業規則に解雇事由として「無断欠勤」が定められていなかったとしても、解雇に正当な理由があって、解雇権の濫用に当たらないのであれば、解雇することが可能と判断されています。(東京地方裁判所 平成12年1月21日判決参照)。
ただし、常時10人以上の社員を雇用する場合は、解雇事由等を定めた就業規則の作成と届出が必要となるため注意が必要です。
無断欠勤が何日続くと解雇が認められる?
法律上、「何日間の無断欠勤が続けば解雇できる」といった規定はありません。
ただし、裁判例では、2週間以上の無断欠勤に対する懲戒解雇を有効と評価しているため(東京地方裁判所 平成12年10月27日判決)、2週間が一定の基準になると判断されます。
他方、6日ほどの無断欠勤で解雇したような事案では、不当解雇と評価している裁判例が大部分であるため、無断欠勤の長さについては要注意です。
もっとも、実際に解雇する場合には、無断欠勤の日数だけではなく、無断欠勤にい至った理由や欠勤中の連絡の状況、社員の反省の態度などを考慮して総合的に判断する必要があります。
無断欠勤が続いても解雇できない場合とは?
たとえ2週間以上の無断欠勤が続いていたとしても、以下のケースに当たる場合は、解雇できないものと判断されます。
- 無断欠勤の原因が職場環境にある場合
パワハラ・セクハラや長時間労働など、無断欠勤の理由が職場環境にある場合は、解雇は相当性を欠き無効となります。会社にはハラスメント等を防止し、職場環境を整備する義務があるため、無断欠勤をすべて社員の責任とするのは不適切と考えられるからです。 - 無断欠勤の理由が精神疾患にある場合
会社には安全配慮義務があるため、うつ病など精神疾患が疑われる場合は、精神科医による健康診断等を実施し、必要な場合は治療を勧めた上で、休職等を検討しその後の経過をみる必要があります。これらの対応をせず、いきなり解雇すると不当解雇となり得ます。
不当解雇をめぐる損害賠償リスク
正当な理由のない不当解雇を行うと、社員から損害賠償請求される可能性があります(民法709条)。
これは、会社の不法行為責任に基づくもので、違法な解雇によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料や、解雇されたことにより得られなかった逸失利益などの賠償金を請求されるのが通例です。
また、裁判などで不当解雇と判断されると、バックペイ(解雇期間における未払給与)を支払う必要となるおそれがあります。
バックペイは、解雇してから社員を復職させるまでの期間について発生するため、解雇から判決までの期間が長期化すればするほど支払額が高額となるため注意が必要です。
不当解雇とならないためにしておくべきこと
これまでのまとめになりますが、不当解雇を防ぐには、次のような手順を踏むことが必要です。
- ①無断欠勤の理由を確認し、対応を決定する
- ②注意・指導する
- ③出勤命令を出す
- ④弁明の機会を与える
- ⑤軽い懲戒処分→重い懲戒処分と段階を踏んで処分を科す
- ⑥退職勧奨を行う
- ⑦解雇を検討する
有効に解雇するには、解雇を避けるために会社として最大限努力した事実を残すことが必要です。
また、解雇の検討にあたっては、解雇するほど悪質な事由であるか、就業規則の解雇事由に当たるか、解雇制限に当たらないか、会社側の対応は適切であったかなどを考慮し、解雇相当かを的確に判断することが求められます。
無断欠勤による解雇にも解雇通知は必要か?
無断欠勤を続ける社員を解雇する場合でも、基本的に解雇通知が必要となります。
具体的には以下のルールに従う必要があります(労基法20条)。
- 少なくとも解雇日の30日前までに、解雇することを本人に通知(解雇予告)すること
- 解雇予告をせずに即時解雇する場合は、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払うこと
- 解雇予告期間が30日に満たない場合は、不足日数分について予告手当を支払うこと。
例えば、解雇日が5月31日で、10日前の5月21日に解雇予告したならば、20日分の予告手当の支払いが必要です。
解雇予告の除外認定について
以下の①②いずれかに当たることを理由に社員を解雇する場合に、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けたならば、解雇予告や解雇予告手当の支払いをせず、即時解雇することが可能となります(労基法20条1項)。
- ①天災事変その他やむを得ない事由があって事業の継続ができなくなった場合
- ②社員の故意・過失等が原因で雇用契約を継続できない場合
無断欠勤の事案で解雇予告除外認定を受けるには、再三の指導・処分等を行ったにもかかわらず、いまだ無断欠勤を繰り返しているなど、会社の業務や秩序に重大な悪影響を与えているようなケースに限られるものと判断されます。
社員が行方不明になってしまった場合は?
社員が行方不明になった場合は、無断欠勤が続くことになるため、解雇事由に該当します。
ただし、解雇の意思表示は、相手方に到達してはじめて効力を生じるため(民法97条)、社員に到達したことが認められないと、解雇の効力は発生しません。
社員が行方不明で所在が分からない場合は、簡易裁判所へ「公示による意思表示」の申し立てを行う方法があります(民法98条2項)。
これは訴訟手続に伴う通常の公示送達とは異なり、相手方の居所が判明しない場合に、裁判所の掲示場に掲示することで、意思表示を到達させる(法的に届いたとみなす)ための特別な制度です。
公示送達を行えば、裁判所を通じて意思表示を行うことで、本人に連絡が付かなくても、解雇通知が本人に到達したものとみなされます。その結果、法的に有効に解雇することが可能となります。
煩雑な手続きを避けるための「当然退職」規定
行方不明の社員を解雇しようとすると、前述のように裁判所を通じた「公示による意思表示」が必要となり、時間と手間がかかります。
この事態を避けるために、あらかじめ就業規則に「当然退職(自然退職)」の条項を設けておくことが極めて有効です。
当然退職とは、一定の事由が発生した際に、解雇の手続き(会社からの意思表示)を待たずに、雇用契約が自動的に終了することをいいます。
ただし、当然退職が成立する期間が短すぎると「解雇権の濫用」と同様の法理で無効とされるおそれがあります。裁判例を考慮し、少なくとも1ヶ月程度の期間を設定することが推奨されます。
無断欠勤を防ぐために企業ができる取り組み
無断欠勤を防ぐために会社ができる対応として、以下が挙げられます。
- 職場環境の改善
職場環境の悪化が無断欠勤の理由になることが少なくないため、長時間労働の削減、業務量や業務配分の見直し、業務内容の変更、社員の適性に合わせた配置転換の実施、残業の事前申請制の導入といった対策をとることが考えられます。 - 不調の早期発見と専門家への連携体制
社員の様子を日々観察し、無断欠勤の予兆(体調不良が続く、業務のパフォーマンスが著しく落ちているなど)が見られる場合は、まずは直属の上司が面談を行い、業務量の調整や業務上の悩みを聞き取るなどの初期対応を実施しましょう。その上で、メンタル不調が疑われる場合は上司が無理に抱え込まず、速やかに産業医や専門のカウンセラーによる面談へつなぐ社内体制を整えることが重要です。 - 勤怠も人事評価の対象とする
無断欠勤を防ぐためには、社員の評価を仕事の成果だけでなく、勤怠面も加味して行うことが必要です。
無断欠勤による解雇の有効性が問われた判例
ここで、無断欠勤による解雇の有効性が問われた裁判例をご紹介します。
事件の概要
スタンプ台を製造するX社で開発部長を務めていた社員Yは、工場長とトラブルを起こし、抑うつ状態に陥ったため、長期間休職を続けていました。
X社はYとの定期面談やリハビリ出勤を通して、Yに適性のある職種はないと判断し、退職勧奨を行うと同時に、工場インク製造班への復職命令を下しました。
しかし、Yはこれを拒否し、復職後の配属先の変更を求めて欠勤を続けていたため、X社はYを普通解雇しました。これを不服としたYが復職命令や解雇が無効である等主張して提訴した事案です。
裁判所の判断(令和元年(ワ)第28027号 東京地方裁判所 令和3年10月27日判決)
裁判所は、以下を理由として、本件復職命令や普通解雇は有効であると判断しました。
- 本件復職命令は、①Yの主治医が人と関わる仕事や開発業務は避けるべきと意見していること、②Yがインク班での仕事に耐えられないと主張したことがないこと、③インク班でも軽作業があること、④X社もYの体調に配慮すると断言していること等を考慮すると、安全配慮義務に違反しない。
- X社は、出勤に応じないYに対し、約4ヶ月にわたり出勤を求めたり、出勤できない場合は面談をしたいので都合の良い日を連絡するよう呼びかけたりしたにもかかわらず、Yは全く応答せず無断欠勤を続けたため、1ヶ月の減給処分を行い、その後も出勤や面談を求めているのに、Yは拒否している。
これらの事情を考慮すると、本件解雇には客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当といえる。
ポイント・解説
裁判所は、X社が行った復職命令は、Yの体調に配慮する対応をとっていたこと等から、有効と判断しています。
また、普通解雇については、X社がYとの面談や出勤要請を何度も行い、別部署での復職を命じた上で、減給の懲戒処分を科し、さらに出勤要請や面談の機会を要求するなどあらゆる手段を尽くしたうえで最終的に解雇としたことを評価して、有効と判断したものと考えられます。
無断欠勤を続ける社員に非があったとしても、いきなり解雇とすると不当解雇として無効となる可能性があります。会社としてはプロセスを踏んで処分を行い、改善に向けた措置を誠実に行うことが必要です。
無断欠勤を繰り返す社員の対応や解雇問題でお困りなら、労働問題に強い弁護士にご相談下さい。
無断欠勤を繰り返す問題社員を放置すると、会社全体のパフォーマンスの低下を招くなど、会社に悪影響を与えるリスクがあるため、迅速に対処することが必要です。
しかし、だからといって無計画に解雇とすると、不当解雇として扱われてしまい、会社がペナルティを負うことになってしまいます。
解雇の有効性については、個別具体的に、慎重に判断しなければなりません。
弁護士法人ALGでは、無断欠勤や解雇に関するご相談を随時受け付けており、労働問題を得意とする専門の弁護士が対応いたします。
無断欠勤を続ける問題社員の対応や解雇問題でお困りの場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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